2021/5/14

環境倫理学入門』

第3章 環境倫理学の見取り図

・「人間中心主義」という命名自体が、道徳的資格を有するのは人間のみであったので、環境倫理学の発想を待たねばならなかった。

・「原生自然」保護をめぐる議論

・生命尊重の見解は、人間中心主義倫理学の立場から、論証を超えた形而上学的前提に基づくものとして否定されている。

・道徳的資格の問題の延長上に「自然の権利」の可能性をめぐるものがある。

・なんらかの不公正を是正していく、利益対立を調整する環境的正義という立場。

・未来世代に対する加害のケースにおいて、近代倫理の核をなす「合意」の観念は意味なし。

シューマッハによる近代経済学批判。ケインズは貪欲や嫉妬心が役立つというが、むしろ、それらは人間の英知を曇らせて本当の利益が何であるかを分からなくさせる。かえって人々は挫折感や疎外感や不安感に襲われる。

・人間中心主義の経済成長と人間非中心主義に自然共生との対立課題は、結局「持続可能な社会」の実現という統一目標に収れんする。

・工夫して経済成長の期間をより延長するのはエコロジー的近代化論、自然の保護を目的とするのは生態学的経済学。

・エコロジカル・フットプリント(EP)

 

環境倫理学の哲学的争点。

・動物を含む自然物に、人間の主観的評価とは独立に固有価値が内在すると説く人間非中心主義。「自然主義的誤謬」の批判にさらされることになるが、これをいかに回避するか。

・そもそも、存在と当為を切り離す近代的二元論の前提が正しいのか。

・理論構築してトップダウン的に働きかける環境倫理学と、状況によって多面的に対処するボトムアップ的な環境プラグマティズム

・前者は価値一元論的。人間非中心主義。道徳的資格(固有価値を認める対象)を念入りに確立することで、議論における負担軽減のメリット。

・人間中心主義的な環境倫理学は、伝統的道徳理論と結びつきやすく、人間あるいは人間社会にとって道具的価値があるときのみに動物などは尊重される。

・後者は価値相対主義、価値多元主義。人間中心主義。共約不可能な多岐にわたる諸価値の併存を認めるがゆえに理論的構築には関心なし。状況に応じた実践的解決を重んじる。

・環境プラグマティズムは、合理的なコンセンサスをとっていくために功利主義と結びつきやすくなる。公共政策の決定においては、経済価値に還元されてしまうので、もはや環境経済学に近くなる。